妊娠中に出血やお腹の張りなどの症状から切迫流産や切迫早産と診断される事があります。
『出産できるんだろうか…』という不安以外にも、『ダウン症(正式名称はダウン症候群)などの障害は大丈夫だろうか…』といった不安が募ります。
ダウン症は染色体異常が原因で起こる遺伝子疾患です。
この記事では切迫流産とダウン症の関係、ダウン症薬の及ぼす影響についてご紹介します。
スポンサーリンク
切迫流産、切迫早産、ダウン症候群って何?
流産と切迫流産とは?
流産は妊娠初期から妊娠21週6日までに起こる妊娠を継続できない状態のことを言います。
切迫流産は流産していないが今後の経過次第では流産の可能性もある危険状態の事を言います。
早産と切迫早産とは?
では早産はというと、妊娠22週から36週6日までに起こる妊娠を継続できない状態の事です。
流産と違う点は、NICU(胎児集中治療室)管理下での生存が可能な点です。
ただ妊娠週数によっては様々な合併症や障害のリスクは残ります。
切迫早産は早産していないが今後の経過次第では早産の可能性もある危険な状態の事を言います。
ダウン症候群
ダウン症候群は21番染色体の異常によって起こる先天的な遺伝子疾患です。
通常2本の染色体が対(つい)になっていますが、ダウン症候群の染色体はトリソミーという3本の染色体を持っている事で起こります。
ダウン症候群は特徴的な顔つきや知的障害、身体的な遅延の他、合併症として心疾患になりやすい特徴もあります。
ではダウン症候群の原因となる21番染色体の異常は何によって起こるのでしょうか?
実はダウン症候群の原因となる染色体の異常は、高齢出産や転座によって起こります。
高齢出産とダウン症候群の原因
高齢出産はダウン症の主な原因の1つです。
高齢出産では女性だけでなく精子を提供する男性側の年齢も重要となっています。
特に35才以上の高齢出産では、染色体異常発生率が約4割強と高く、30代前半の女性(約2割)と比較しても約2.5倍以上の開きが見られています。
ダウン症候群の原因 転座
転座とは、染色体の一部が千切れ他の染色体と結合、融合、欠損した状態のことを言います。
転座には大きく分けて2種類の型があります。
- 均等型…転座があっても正常な染色体とトータルの情報量に違いがない場合
- 不均等型…欠損や重複などで情報量に違いが見られる場合
『不均等型』の場合、様々な障害を伴いますが、『均等型』の場合、日常生活に支障をきたす問題はありません。
ただ両親のどちらか、または両方にこの転座があると、不完全な染色体で受精卵が作られる為、流産を繰り返す場合があります。
切迫流産と薬が及ぼすダウン症候群への影響?
卵子と精子が出会うと子供の元となる受精卵が形成されます。
受精卵は分裂を繰り返しながら子宮内膜に着床、心臓や神経、手や足などの各器官が形成されて赤ちゃんが形作られていきます。
この妊娠初期から始まる器官形成の時期に薬などの催奇形因子にさらされると奇形や障害を持った赤ちゃんが誕生する可能性はあります。
切迫流産6週目 奇形を伴う様々な催奇形因子とそのリスク
いぬくん 切迫流産 6週目に知りたい情報をまとめてみました。 切迫流産とはどういう疾患? 切迫流産の兆候と診断後、どういう経過をたどる? 妊娠6週目の母体の状態は?赤ちゃんはどんな状態にある? 原因は ...
ただダウン症の場合は、卵子や精子に分かれた時点からすでに異常な情報を持っており、薬などの催奇形因子がダウン症を作り出すわけではありません。
妊娠初期の切迫流産とダウン症候群の関係
妊娠初期の切迫流産の原因の1つに染色体異常があります。
染色体というのは身体の設計図で、生命維持活動に必要不可欠な情報や性別、髪の色や目の色など個体特有の情報を有しています。
赤ちゃんは両親から精子と卵子という形で染色体を1本ずつ受け取ります。
高齢出産や両親の両方または片方に転座があると、何らかの染色体異常を持つ赤ちゃんが誕生する確率が高くなります。
生命維持活動に必要な染色体に異常があると、多くは早期流産の時期(妊娠初期〜12週未満)に流産という形で淘汰されてしまいます。
また出産出来ても長く生きていくことができません。
ただダウン症の場合は染色体の異常ですが少し違います。
ダウン症の原因となる21番染色体は、生命維持活動に関連する染色体ではありません。
その為、前期流産の時期に淘汰される場合ももちろんありますが、20%程度は出産に至ります。
妊娠中に感じるダウン症の不安Q&A
赤ちゃんがダウン症の確率は?
ダウン症は人種や赤ちゃんの性別に関係なく、一定の確率(1/800)で起きる染色体の異常です。
染色体の異常は高齢になればなるほど起こりやすく、妊娠する年齢に比例してダウン症になる確率も高くなります。
ダウン症の確率
25歳未満…1/1300
30歳 …1/900
35歳 …1/300
40歳…1/100
35歳で言えば、300人の妊娠さんの内1人はダウン症になる確率です。
ダウン症の確率を上げるのは、何も年齢だけではありません。
両親のどちらかに転座があると、年齢に関係なくダウン症のリスクは高まります。
ダウン症は流産しやすい?
流産の約80%は染色体の異常が原因で起こります。
染色体に異常があれば、流産という形で自然淘汰されますが、ダウン症では自然淘汰されない場合があります。
染色体異常は、ダウン症の原因となると21番染色体以外でも起こりますが、13番、18番以外は生命維持に必要な遺伝子である為、異常があれば早期に流産となります。
ダウン症も約80%程は自然淘汰されていますが、約20%は自然淘汰されず出生に至ります。
流産を繰り返すのはダウン症が原因?
流産を繰り返すことを反復流産(流産を2回繰り返すこと)や習慣流産(流産を3回以上繰り返すこと)と言います。
ダウン症の原因は、高齢での妊娠や染色体異常が原因ですが、『ダウン症が原因で流産を繰り返している』訳ではありません。
繰り返す流産の原因は不育症です。
不育症の原因は以下のとおりです。
不育症の原因
- 子宮の奇形や筋腫
- ホルモンの異常
- 高齢での妊娠
- 染色体異常
流産を繰り返している場合は産婦人科で不育症の検査を受けましょう。
引用:兵庫県医師会
妊娠中にダウン症であることがわかる特徴は?
つわりがないとダウン症になる
ダウン症は流産しやすい
ダウン症は早産が多い
なんてことが言われますが、科学的根拠は一切ありません。
ただエコー検査や血液検査からダウン症の可能性を知ることができます。
エコー検査でダウン症のリスクを確認
妊娠10〜14週頃のエコー検査で胎児の後頭部にある液体の貯留像(NT=nuchal translucency)を図ることで染色体異常や先天性疾患などのリスクを知ることができます。
NTが3mm以上ある場合、胎児異常の確率が高くなりますが、確定診断には羊水検査が必要です。
血液検査からダウン症のリスクを確認
妊娠初期〜中期の母体の血中に含まれるAEP、hCG、u-E3を使用するトリプルマーカー検査やインヒビンAを加えたクアトロマーカー検査でダウン症のリスクを知ることができます。
80%以上の高い検出率を誇っていますが、陽性的中率は低く、NT同様羊水検査による確定診断が必要です。
切迫流産では排除しきれないダウン症とその原因まとめ
ダウン症の原因は21番染色体の異常です。
通常遺伝子に異常があれば、流産の最も多い前期流産(妊娠初期〜12週未満)の時期に切迫流産→流産という形で妊娠の継続はできなくなります。
ただ21番染色体は生命維持活動に必要な遺伝子ではありません。
染色体異常があっても切迫流産→流産という経過をたどらず、20%程は出産まで到達します。
つまり『切迫流産なった』、『切迫流産にならなかった』という事ではダウン症かどうかを判断できません。
ダウン症を判断したいなら、出生前診断が必要不可欠となります(出生前診断は奇形や障害を判断するのに有効な方法です)
奇形や障害、ダウン症を受け入れるか否かは夫婦の状況により違いがあると思います。(例えば、不妊治療の末に出来た赤ちゃんなら人工中絶という選択を安易にはできないでしょう。)
障害を受け入れるにせよ、人工中絶という選択をするにせよ時間は限られています。(人工中絶は妊娠21週6日まで)
正しい選択、後悔しない選択なんて誰にもわかりません。障害を受け入れると決めていても、保育器に入る我が子を見て逃げ出すママだっています。
今は限られた時間を無駄にしないでください。問題を先送りしても何も解決しませんよ。
限られた時間を無駄にしないためにも、今できることを始めませんか?
妊娠中ダウン症の不安で苦しんでいる時に読むべきおすすめ3冊
切迫流産で安静を強いられている時、ついつい悪いことばかりがを考えてしまいがちです。 知識や経験が得れば、今の状況にもある程度対処でき、気の持ちようもあるのでしょうが…。 初めての妊娠、初めての切迫流産 ...
切迫流産の安静な過ごし方を考える
こんにちは、HIKOです。 『切迫流産と診断され安静を指示されました。どんな寝方(姿勢)が良いですか?』 楽な寝方なら仰向けでも、横向きでも大丈夫です。 (出産間近の大きなお腹では仰向けはオススメしま ...
切迫流産でも羊水検査を前向きに考えるべき妊婦さんの5つの特徴
こんにちは、HIKOです。 30代中頃から40代で妊娠すると、流産や早産のリスクが20代に比べ高い傾向にあります。これは細胞の老化によるものが主な原因で、ダウン症などの先天性疾患や奇形など障害を招く可 ...